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蛇紋岩の山 - 早池峰 - の花 [山を歩く]

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早池峰山 (1,917m)

8月11日 北上山地の最高峰、岩手県の早池峰山に登る。この山は超塩基性の橄欖岩や蛇紋岩からできているため、ハヤチネウスユキソウやナンブトラノオ、ナンブイヌナズナ、ナンブトウウチソウなど蛇紋岩地帯特有の高山植物が見られる憧れの山。

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散策コース : 河原の坊 - 頭垢離(コウベコウリ) - 早池峰山 - 小田越

地図のコースタイムは、登り3時間30分、下り2時間20分の約6時間のところを10時間と十分に時間をかけて高山植物を見て回った。

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森林限界は、他の山よりずっと低い

早池峰山は標高1,914mの山だが、山頂付近の植生は高山帯と亜高山帯に属している。森林限界も北アルプスに比べてずっと低く、1,300m位のところと言われている。

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「ハヤチネウスユキソウ」

8月中旬に入り、登山者が少なくなってきている。それはいいのだが、高山植物の花の時期も過ぎてしまっているのが心配だった。東北の山を歩くのは初めてだったが、大雪山との共通の植物も分布していることから楽しみにしていた山だ。


早池峰山で 出会った花たち

 

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早池峰の固有種が出迎えてくれる (画面右下にナンブトウウチソウ)

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「ナンブトウウチソウ」 (早池峰固有種で絶滅危惧種 バラ科)

ワレモコウ属の植物。近縁のタカネトウウチソウやエゾトウウチソウが花穂の下の方から上に向かって咲くのに対して、こちらは先端から下に向かって咲く。前者が無限花序、後者は有限花序。

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「ナンブトウウチソウ」 と 「シロバナトウウチソウ」(東北地方の高山帯)

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「ナンブトラノオ」  (早池峰固有種で絶滅危惧種 タデ科)

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本州から北海道までの山地帯~高山帯には、近縁種のイブキトラノオ大群落を形成している。こちらはイブキトラノオよりも花穂が短く、根葉には光沢がある。群落にはならないようだ。

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「オヤマソバ」 (タデ科)

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北海道や東北、北アルプスの高山帯の砂礫地に群生。オンタデやウラジロタデと違って葉柄がほとんどなく、枝はいなずま形に曲がる。写真下は雄花で花が白い。この花が「ソバ」の花に似ている。

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山頂直下の「御田植場」は、亜高山帯上部~高山帯下部の植生

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山頂直下は蛇紋岩の巨岩がごろごろしている。森林限界を越えた植相だが、アオモリトドマツやハイマツなどが一部に見られ、所々にお花畑が広がっている。ピンクの花はタカネナデシコ。

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「タカネヤハズハハコ」 (キク科)

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ウスユキソウに似ていることから「タカネウスユキソウ」とも呼ばれるが、ウスユキソウ属ではなく、ヤマハハコ属という別のグループ。本州中部以北~北海道の高山帯の湿った草地などに生育する。頭花の花は似ているが、ヤマハハコには星状の開いた苞葉がない。

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「ヤマハハコ」 (キク科)

北海道、本州の山地の日当たりのよい草原などに普通に分布


 

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早池峰山に見られるウスユキソウの仲間は、

「ハヤチネウスユキソウ」 「ウスユキソウ」 「ミネウスユキソウ」 の2種1品種

40ウスユキソウ12.jpg ウスユキソウ」 (キク科)

41ミネウスユキソウ11.jpg 「ミネウスユキソウ」(キク科)

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「ハヤチネウスユキソウ」 (固有種 絶滅危惧種 キク科) 

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ハヤチネウスユキソウは、早池峰山の高山帯のみに生育する固有種。日本産のウスユキソウの仲間では最も大型で、木曽駒ヶ岳の「ヒメウスユキソウ」とともに、アルプスの「エーデルワイス」によく似ている。白いフランネルのような部分は花ではなく苞葉。この星形に開いた苞葉がウスユキソウ属の大きな特徴。


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森林限界を超え、高山帯下部はハイマツ林が広がる

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本州中部ではハイマツ林は標高2,500m前後に発達するが、ここは1,900mのところ。樹高1m位のハイマツにコメツガ、ミヤマビャクシンなどが混じった樹海が広がっている。風の来ないところにはウラジロナナカマドやミヤマホツツジなどがみられる。ときどきハイマツの実(球果)が食べられているのが見つかるが、これはホシガラス(写真右)に食べられた痕のようだ。

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高山帯岩礫地の植相 (岩の隙間にはいろんな花が入り込んでいる)

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「ハクサンシャジン」 (キキョウ科) 葉は3~4枚輪生する

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「ミヤマシャジン」 (キキョウ科)

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「ヒメシャジン」 (キキョウ科)

53ミヤマシャジン34.jpg ミヤマシャジン35-2.jpg

ミヤマシャジンはがく片に細かい歯牙があり、花柱が花冠から突き出す

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左:白花ヒメシャジン (ヒメシャジンはがく片に歯牙がなく、花柱がつきださない)

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「ムシトリスミレ」 (タヌキモ科 左:葉 右:別地域で撮影)

北海道から四国にかけての亜高山帯~高山帯の岩の上などに生える。高山性のムシトリスミレ属は石灰岩や蛇紋岩上によく生育。葉の表面は粘液を付けた細かい腺毛で覆われ、粘りつけられ動けなくなった虫を消化吸収する。花の時期が7~8月だが、この株には花茎はなかった。

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「コケスギラン」 (イワヒバ科)

北海道や東北~関東地方以北、北アルプス北部の高山帯の草地に生える小型の常緑性シダ。

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「コケモモ」 (ツツジ科 左:果実 右:別地域で撮影した花)

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「クロミノイワゼキショウ」 (ユリ科)

北海道と本州中部地方以北の高山帯の岩礫地に生える。

65クモマニガナ13.jpg66クモマニガナ12.jpg

「クモマニガナ」 (キク科)

北海道と本州の亜高山帯~高山帯に生える。ニガナの高山型だが、根生葉は楕円形で、タカネニガナより全体的に小型。

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「キンロバイ」 (絶滅危惧種 バラ科)

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絶滅危惧種。北海道と本州の亜高山帯~高山帯の岩礫地に生える落葉低木。

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亜高山帯の森林限界付近のオオシラビソ林

亜高山帯のオオシラビソは、山の高度が増すにつれ、樹高が低くなったり、生え方がまばらになったりしてくる。所々にセリ科やコバイケイソウなどの亜高山広葉草原が見られる。ここでは、そのまま高山草原へと移行していくように見える。

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広葉草原 -花が全く見られない 「コバイケイソウ」 群落- (ユリ科)

70コバイケイソウ千畳敷.jpg コバイケイソウの花(撮影は別地域)

コバイケイソウの花は、3年に1回しか大咲きをしないと言う。丈の高い(1mにもなる)大型植物の群落が一斉に花をつけるには、高山の湿地では栄養が不足すると考えたコバイケイソウの知恵なのだろうか。

他の地域にも、似たような現象がみられるとのことだが、それにしても群落内に花が全く見られないというのは不思議なものだ。

ご訪問ありがとうございました

「 蛇紋岩の山 - 早池峰山 - の花 」  次回へ続きます


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コメント 13

mimimomo

こんにちは^^
まだまだ高山植物が色々有りましたね。良かったですね。わたくしはこの
お山、強風と雨のため8~9合目の辺りで撤退しました。
ほとんどお花のない時期だったし、もう一度行きたいお山です。
by mimimomo (2012-08-19 15:48) 

いろは

こんにちは^^
早池峰山といえば、何と言ってもハヤチネウスユキソウですね〜♪
エーデルワイス、大好きなお花です。
タカネヤハズハハコも綺麗ですね〜
やはり気になるヒメシャジン(^^;
とても可愛いですね♪
我が家のヒメシャジンはヒメイトシャジンのようですね。

by いろは (2012-08-19 16:25) 

ふーみん

岩手県の早池峰山 恥ずかしながら初めてききました。
沢山の高山植物 その中でもハヤチネウスユキソウが
すてきですね。
ムシトリスミレのブルーがきになります。
イブキトラノオはおぼえてます。
ホシガラス がいるのですね 白いカラスもみたことあります。
真っ黒より可愛げありますね。

 
by ふーみん (2012-08-19 17:10) 

yakko

こんばんは。
蛇紋岩の山を初めて見ました〜(◎-◎;)
北国にはご縁がなくて、まして山野草には全然・・・ !
またまた山野草を見せて戴きました。ウスユキソウにもいろいろあるんですね。ほんと、エーデルワイスに似ていますね。
ムシトリスミレのブルーが良いですね〜(^。^)
by yakko (2012-08-19 19:49) 

OJJ

エーデルワイスの刺繍の帽子買ったのに帰ってすぐにどこかで紛失・・・
後日義兄に買って来て貰ったが、好みが違う・・
ホシガラスは八方尾根でしっかり見ました~
by OJJ (2012-08-19 20:59) 

michi

おはようございます。今朝は涼しい朝ですね。虫の声もいつもより賑やかになってきているようです。

ご訪問 & コメントありがとうございます。
mimimomoさん:早池峰は結構きつい山でしたね。私の体力がそれに追いつかないほど落ちてきていることを実感しました。でも、高山植物の宝庫でしたね。

いろはさん:シャジンやウスユキソウの仲間、それにまだまだいろんな花があって楽しめました。季節を変えて登って、別の花を見たいですね。

ふーみんさん:北アルプスを中心に登っていたものですから、東北の山は初めてでした。早池峰固有種のナンブトラノオは、高い岩場ほど小さくてかわいい花になっていました。

yakkoさん:ムシトリスミレの株は少しだけでした。あまり湿った場所ではなかったんですが、窪地のようなところだったので生育できるんですね。

OJJさん:八方尾根もいいところですね。後ろ立山連峰を縦走しているときに、降りてきたことを思い出します。

ご訪問ありがとうございます。
グリーンさん

月のうずのしゅげさん
by michi (2012-08-20 05:45) 

g_g

毎年今年こそは早池峰へ行こうなんていいながら、一年を過ごしてしまいます、山の中の混み具合を見ると遠のいてしまいます。
やはり早池峰の固有種は気になりますね、こうして見てみると
魅力的な花ばかりで綺麗ですね、たっぷり時間をかけて楽しまれたようですね、お疲れ様でした。
by g_g (2012-08-20 08:07) 

夏炉冬扇

今日は。
このところ、山に登るといえば「山城」や「墓跡」探し。こういう山らしき高さの山にはずっと登ってません…
by 夏炉冬扇 (2012-08-20 14:06) 

水郷楽人

高山植物の花々が奇麗ですね。自然豊かな証拠ですね。
by 水郷楽人 (2012-08-20 19:34) 

Baldhead1010

蛇紋岩・・・こちらでもレンズ状の露頭が各所で見られ、独特の植生があるようですね。
by Baldhead1010 (2012-08-21 04:18) 

michi

おはようございます。
ご訪問 & コメントありがとうございます。

g_gさん:たっぷりと見てきました。時期をもうすこしはやめて登りたいですね。花が過ぎてしまったものがあったので、次回は7月中にトライ!!

夏炉冬扇さん:私も、最近は1年に一つか二つしか登れなくなりました。でも、爽快感は抜群ですね。

水郷楽人さん:山頂付近のお花畑はさすがにすばらしいです。

Baldhead1010さん:蛇紋岩の山は特殊な環境なんですね。珍しいものをたくさん見ました。

シラネアオイさん:ご訪問ありがとうございました。

by michi (2012-08-21 07:09) 

satton

早池峰山は固有の花がいっぱいあって魅力的な山ですね。これからのシリーズ、楽しみにしています。
by satton (2012-08-21 13:50) 

履歴書

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
by 履歴書 (2012-09-07 16:54) 

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