- 旅の思い出
現地の案内看板から (日本語と矢印を加筆)
ガリネロ山・トバコール山の麓を流れ下るアラサス川を上流に向かって歩き、途中で滝をいくつか見ながら渓谷の奥にあるコラ・デ・カバージョ滝まで迫る。スタート地点の標高は1,230mで、暫くは深い森(ブナ林、そして次第に松が優先してくる)が続く。上り坂が終わりソワッソ滝を越えると草原地帯に出る。渓谷の奥にはピレネーの最高峰3番目のペルデイト山(3,355m)の姿が見えてくるという。
スタート地点付近はブナ林の中
深いブナの森が強い陽射しを遮り、澄んだアラサス川の運んでくる冷気に囲まれ、とても気持ちのいいスタートとなった。頭上遥か上の方には、ガリネロ山・トバコール山の頂が見え隠れしている。暫くは森林の中を進む。
ムラサキ科 エキウム・ブルガレ ~Echium vulgare~
フランス語名「Viperine vulgaire」。花冠が「vipere(マムシ)」が口を開いているように見えるからとガイドが説明。青紫色の花はハーブとしても利用され、サラダの彩りや砂糖漬けなどに用いられという。
***** ラン科の花 *****
ハクサンチドリの仲間 ~Orchis militaris~ 右2枚は種名・・・?
左:ラン科~種名?~ 右:ユリ科 パラダイスリリー
鬱蒼としたブナ林(おそらくヨーロッパブナ)を進む
出発してから約2時間弱。スタートは大変ゆっくりと進む。ときおりガイドの説明があるが、私は更にゆっくりと写真を撮りながら歩くので、説明には間に合わない(いつものことだが、気にしないで景色を楽しむ)。
キキョウ科 タマシャジン属 ヘミスファエリクム ~Phyteuma hemisphaericum~
ドロミテでは “魔女の爪” と言うニックネームで紹介されたが、こちら(スペイン・フランス)ではこの名を聞かなかった。
ユキノシタ科 サキシフラガ・ロンギフォーリア ~Saxifraga longifolia~
ピレネー固有種で、“王冠” と言うニックネームがある。日当たりのよい石灰岩の割れ目を好む。大きな花茎になると100以上花を付けるものもあるというが、残念ながら咲いてはいなかった。花を咲かせた後は枯れてしまう。
セリ科 アストランティア・マヨール ~Astrantia major~
属名の“Astrantia” は「星・天体」と言う意味で、花冠の形から付けられたようだ。アストランティア属はヨーロッパ・アジアに4~5種分布しているだけだというが、仲間は園芸種として出回っていて、ふんわりとした雰囲気からナチュラルガーデンやフラワーアレンジなどに使われているという。
タヌキモ科 ムシトリスミレ属 ロンギフォリア ~Pinguicula longifolia~
ピレネーはアルカリ土質で窒素分が少ない。食虫即物のムシトリスミレは動物から窒素分などの栄養を撮っているのだろう。
イワタバコ科 オニイワタバコ属 オニイワタバコ ~ピレネーイワタバコ~
ピレネーイワタバコは氷河期を生き抜いた植物でピレネー固有種。オルデサやガバルニーなど、石灰岩の岩場の日陰を好んで生育している。スペインでは “Oreja de Oso(熊の耳)” と呼ばれているという。
森林地帯が終わり、岸壁が見えるようになってきた(ソワッソ滝の直前)
何段にも重なった滝 ~ ソワッソ滝 ~
どうやら、ここが森林(おそらくヨーロッパアカマツやモミの仲間)と草原の移り変わる場所のようだ。
リンドウ科 リンドウ属 ルテア ~Gentiana lutea~
ソワッソ滝の淵の黄色い花のリンドウ。根の部分が医薬品や化粧品・香料などに使われているという。
森林限界を過ぎて草原の入口に
渓谷の両側には高い岩壁が続き、奥に雪をいただいたピレネー第3の山 ~ペルデート山(標高3,355m)~が見えてきた。右から陽射しが当たり、左の壁は黄色の花が輝く。
ここは世界遺産。氷河の浸食を長い間受けて現在の自然を作りだした “自然遺産の顔” と、放牧生活を独自の知恵で続けている “文化遺産の顔” の両方を持ち合わせた特殊な場所。
左側の岩山 & 草原
右側の 岩山 & 森林限界付近・・・・・逆光でうまく撮れない
真っ正面に迫るペルデート山 ・・・ 石灰岩質の岩山なのだろうか
ゴマノハグサ科 シオガマギク属 タカネシオガマ
ハンニチバナ科 ハンニチバナの仲間
ピンクの花が珍しかった。黄花のハンニチバナ~Helianthemum nummularium~の亜種のようだ。
バラ科 イヌバラ ~Rosa canina~
「アルプスのバラ」と呼ばれている深紅の花弁のバラ ~Rosa alpina~ と違って、淡いピンクの花弁の元の方が白く、先端が曲がっているのが特徴らしい。
ゴマノハグサ科 キンギョソウ属 マユス ~Antirrhinum majus~
園芸店でいろんな品種の “金魚草” を見るが、この花をもとにした園芸品種かもしれない。
オルデサ国立公園のU字谷の先 ・・・ コラ・デ・カバージョ滝を目指す
ピレネーの中心にあるオルデサ国立公園は、迫るU字谷・V字谷の絶壁と草原が魅力。U字谷の底から世界遺産 ~ペルデイド山~ の壮大な勇姿を見上げることができる。
~黄色の絨毯~ が広がる
谷底から続く斜面に広がる黄色の絨毯はマメ科植物の “エリソン”。この花は7月になると黄色の花が咲くという。フランス側のピレネーでは見られなかった素晴らしい光景がここに広がっている。
マメ科 エリソン ~Echinospartum barnadesii~
マメ科植物エリソンは、養分のない岩肌に最初にとりつく。窒素分を地下に蓄え肥沃な土壌ができると、次第にいろんな植物が生育してくる。エリソンは岩場 “先駆者” なのだという。
“エリソン” は、スペイン語でハリネズミのことを言う。この木にトゲトゲがあって似ていることから、この名付いたとのこと。触るととても痛い。ホントに痛くて、とてこの絨毯の上では横になることができない。
黄色の絨毯~エリソン~ と コラ・デ・カバージョ滝
画面左端方向から、ほぼフラットな草原を右端の滝へと進んできた。滝の姿をやっと捉えることができた。大勢のハイカー達が水辺に集まっているのが見える。
真っ青な空と黄色の斜面、大草原、そして流れ下る滝、・・・・・見渡す限り 大自然が広がる。
コラ・デ・カバージョ滝
“馬のしっぽ” と呼ばれる滝
岩山の壁に囲まれた大草原の真ん中を一本道が続いる。その最も奥にコラ・デ・カバージョ滝がある。馬の尻尾に見える滝は、ここまで来た人にとって別天地のようなところだ。
オルデサ公園のトレッキングはここが終点。
ここより、(一部往路とは異なるコースを通り)スタート地点へ折り返す。
往路では見なかった滝をいくつか通る
エストレッチョ滝
この滝は・・・?
トレッキング終点近く ~アラサス川の橋を渡る~
終点まではあと僅か。後方は“サラロス山(2,748m)“。上流(右奥)から下りてきた。
オルデサ渓谷の最深部 ~ソアソ圏谷斜面の黄色の絨毯~
約8時間のトレッキングが終わる。今日も素晴らしい自然を堪能できました。